逃げるな大臣 漁民に背を向けるな。

7月22日長崎入りした島村農水大臣は、金子知事や関係者と懇談し、翌朝、千々石の棚田を見学後、諫早湾に到着。
南部排水門から北部排水門まで潮受堤防を走り、天狗鼻排水機場から干拓地に入り、試験ほ場を見て市内に帰って来た。
報道陣の取材場に予定されていた道具屋ホテルには、大臣への直訴を構えて市民、漁民が集結していた。
12時前、黒塗りの高級車で乗りつけた大臣は、皆が待っている正面玄関を避け、玄関脇の通用口から3階会見場へ向かった。
これを察知した漁民達は「大臣!、大臣お待ちください。」と声をかけたが、彼は見向きもせずにエレベーターに消えた。
「佐賀有明の会」川崎会長は居合わせた農政局の職員に交渉し、大臣への「要望書」手渡しを依頼した。
ホテルでの記者会見と昼食の後、大臣が出かけるタイミングに「会える」と我々は待機した。
しかし、大臣は20分後には黒塗りに乗り込み、みんなの前を走り去った。
諫早名物の「うなぎの蒲焼」も食べずに。

「要望書」を以下に紹介します。

農水大臣
   島村宜伸 様

                     佐賀有明の会
                     会長 川崎賢朗 印

            要   望   書

 大臣には益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
 ご承知のとおり、有明海では平成9年4月14日の諫早湾干拓堤防閉め切り以降、
当初より懸念されていた海況異変が続いています。
 私達は、有明海の異変が顕著になった平成12年未頃より、異変との因果関係が最
も疑われ、漁業者自身も知識と経験から感じ取る『諌早湾干拓事業』との関連を様々
に追求して参りました。その結果、先の福岡高裁が決定した『諌干工事差し止め取り
消し』の内容骨子に、『ノリの第三者委員会が提言した排水門の中・長開門調査を含
めた漁業環境の悪化に対する調査研究を実施すべき責務を漁業者に対し背負う』と九
州農政局へ注文を付けでおります。この事は、有明海異変の原因究明には中.長期の
開門調査が最重要事項である旨を、更めて指摘したものと受けとめています。
 大臣に於かれましては、英断を以てこの開門調査を早急に実施され、有明海異変と
諫早湾干拓事業との因果関係を一日も早く明白にして、後世に憂いを残さない措置を
執られん事を強く要望致します。

平成17年7月23日

        



ホテル玄関前で待機する漁民たち 
  05.07.23




諫早湾干拓事業に反対する4団体による、大臣への抗議声明を掲載します。
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                          2005年7月25日

【抗議声明】

 「反対する人の気持ちが分からない」との島村農水大臣の発言に強く抗議する。
 農水大臣は、諫早湾干拓事業に反対し有明海の再生を求める漁業者や市民の声を
 真剣に聞け!


                      有明海漁民・市民ネットワーク
                      諫早干潟緊急救済本部
                      諫早干潟緊急救済東京事務所
                      「よみがえれ!有明訴訟」を支援する全国の会

 昨日、島村農水大臣は、諫早湾干拓事業の工事現場を視察し、「予想以上に良く
できている。反対する人の気持ちが分からない。九カ月のブランクはあったけれど
も、何とか取り戻したい」と発言したと報じられた。(西日本新聞他)

 私たちは、諫早湾干拓事業に反対する者として、大臣の発言に強く抗議する。

 私たちは、これまで何度も、反対する者の気持ちを伝えるため、農水大臣に直接
面会することを求めてきたが、それを拒んできたのは、農水大臣であり、国である。

 今回の視察も、二日前の7月21日に急遽発表されたものであるが、事業に反対する
漁業者や市民は、視察の現場に駆けつけ、大臣に対し、反対する者としての気持ち
を伝えようと努力した。
 しかし、視察現場での大臣の行動は、まさに人目をはばかるかのようであり、待
ちかまえた漁業者や市民に顔も見せず「逃げるように帰って行った」というのが、
実際に現場に駆けつけた者の率直な印象である。

大臣は、極めて限られた時間の中で、潮受堤防や試験圃場に立ち寄り、都合の良い
ところだけをPRしたあげく、「事業が公正に運ばれることを期待している」など
と述べたようである。しかし、事業を公正に運営すべき責務を負っている事業主体
の長が、他人事のように「期待している」などと発言すること自体、許されないこ
とである。
 それにも増して許し難いことは、水産行政のトップであるはずの大臣が、深刻な
漁業被害に苦しむ漁業者の声が、「理解できない」と言ってはばからないことであ
る。これは、農水大臣としての資質に関わる大問題である。

 大臣が、本当に「反対する者の気持ち」を理解するつもりがあるならば、私たち
は、どこへでも出向き、大臣と直接、話し合う用意がある。

 私たちは、島村農水大臣に対し、私たちと直接話し合う場を設けることを、改め
て要求するものである。

                                    以 上

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