( 別添 )    

   表紙


1.パンフの発行元、責任者の所在、期日が無い
  経費の出所、責任者の所在と発行期日を明らかにしてください。

2.表紙に「概要版」とありますが、別に「詳細版」があれば、明示し公開してください。

3.このパンフ発行の目的、意図は何ですか。
  「いっしょに考えてみませんか!」との表現があるので、県民との対話を求めている、と受
  け止めました。
  私たちはいつでも、諌早湾潮受堤防排水門の開門について、意見の交換や対話に応じる用意 
  があります。関係者や関心のある方々での、忌憚の無い話し合いの場を持ちましょう。


    
2ページ 防災効果を発揮する仕組み


4.「潮受堤防が高潮や高波を防ぐ」のは事実です。潮受堤防の運用に加えて、従来の海岸線の堤防の
  強化で防災の役割は果たせます。開門してもその状況に変わりは無く、「開門したら大変だ。」
  との印象操作、あるいは県民への宣伝にしているのは残念です。

5.「大雨時でも雨水はスムーズに調整池に流れ込み・・・」

  降水量、小潮の時の干潮の時間帯などの条件次第で排水門の作動は阻害され、貯水や排水に
  も限度があります。
  低平地、干拓地での排水不良と湛水被害は想定しなくてはならない。
  本明川の洪水対策とは無関係である。

6.低平地の排水不良対策には、堤防及び排水路の整備とポンプによる強制排水が肝要である。


    
3ページ ガタ土との戦いと干拓の歴史


7.諌早湾に火山灰がたまり、干潟が出来て、干拓地が出来て行く過程を「ガタ土」との戦い
  として敵視しています。

  「干潟」の価値を無視し、敵視するので無く、多様な生物資源、生き物の「ゆりかご」と
  しての干潟を評価して欲しい。
  「干潟」があるから諌早湾があり、有明海の価値があるのです。
  この干潟は、有明海に注ぐ河川から火山灰が流れ込み、海の流れに沿ってゆっくりと堆積
  した、きめの細かい内湾干潟です。
  この干潟では、沢山の底生生物や魚介類の産卵により稚魚が育つ。つまり有明海の子宮と呼
  ばれる所以です。また、渡り鳥は遠くシベリアからオセアニアへの旅の途中にこの干潟に降
  り立ち、これらの生き物を餌にして乱舞し、さらに旅を続けます。生物多様性の象徴がここ
  にあります。

  有明海の干潟は毎日2回、最大5~6mの潮の干満がある。これは一年を通して大潮、小
  潮を繰り返し、そのリズムは地球と月の発生から永遠の時間をかけて保ち続けて来た。そ
  の長い自然現象の中で干潟が出来、生き物が発生し、進化して現在がある。
  この歴史があって我々人間はそこに生き、自然のなかに共存、共生することが出来る。
  「諌早湾」はラムサール条約に登録、あるいは世界自然遺産にも登録出来る、日本最大の
  干潟なのです。

  
     
4ページ 確かな防災効果が発揮されています

  
8.排水門の工事完成後、ポンプ増設などの工事で通常の排水改善効果は期待できるようになり
  ました。平常時の調整池は-1.0mの管理は出来ます。しかし、小潮の時の大雨など、
  排水門からの排水が間に合わない、想定外の自然現象が起こることを市民にも周知し、万
  全の防災対策をして置く必要があります。今後は何も起こらない、とは断言出来ません。

  
     
5ページ 干拓地での営農は、すでに始まっています
  

9.「大区画で平坦な優良農地を生かした・・・」とありますが、果たして「優良農地」と言
  えるのでしょうか。
  干拓農地の3割は排水不良で、新たな暗渠の工事が必要です。
  冬場の多良岳からの風速20mを越す強風は、露地の野菜類の作付けは無理です。
  湛水した調整池の水温は冬はマイナス、夏は高温で推移。
  粘質の土壌はジャガイモに不適。加工用のみで青果用の作付けは伸びない。
  大区画に対応するには大型機械を導入。投資過大で撤退する農家が相次ぐ。

10.「食料・農業・農村基本法」第3条は農業の多面的機能を掲げ、「自然環境の保全」
  を指摘し、第4条では農業の「自然循環機能」(農業生産活動が生物を介在する物質の循環)
  が維持増進され、持続的な発展が図られなければならない。とありますが現状はいかがで
  しょうか。
  農地から堆肥や化学肥料の窒素やリンが流入し、調整池は生物による食物連鎖を断ち切り、
  汚濁水の製造装置となっています。
  農業が本来持つ「自然循環機能」(農業生産活動が生物を介在する物質の循環)が損なわれ
  まさに「環境破壊型農業」ではないでしょうか。
  

     
6ページ 有明海の漁獲量等の推移は

  
11.漁民が生産額確保のために、従来廃棄していた「色落ちノリ」なども収穫し、毎日の稼
  働時間や人数、日数なども延ばして働いた結果の枚数であり、生産量である。海の状況が
  良くなったわけではない。

  貝類は昭和58年の100tから59年の50tに半減し、以後20t以下に減少し低迷し
  ている。稚貝の投入、垂下式の養殖など、公共事業により生産が維持されている。
  

     
7ページ 有明海に流入する河川の水質は
  

12.調整池の水質が悪いという事実は、以下のデータから明らかです。

    B1表層  
         平均値    環境基準値

    COD    6.8mg/L    5.0mg/L
    SS      45mg/L   15 mg /L
    T-N   1.23mg/L    1.0mg/L
    T-P   0.209mg/L    0.1mg/L
      
  (九州農政局:平成29年(2017年) 諌早湾干拓事業環境モニタリングデータ)

これは2017年のデータですが、干拓工事が終わって20年間この傾向は変わらず、
諫早市長からも毎年「調整池の水質をなんとかしてくれ。」との要請が農水省になされています。

13.「モニタリングの結果CODは佐賀クリークの3分の1」と説明していますが、諌早湾の
  調整池と佐賀県のクリークの水質を比較していることが間違いです。

  有明海は潮汐が5~6mあり、河口では毎日2回底泥を巻き込んで、満ち潮と引き潮の潮が
  流れています。大潮の時期でなくても、河口の水を採水し、CODを測ればその値は100mgと
  いう数字は当然です。
  調整池のデータは、閉め切られて汚濁物質が沈殿した池の表層を採水しており、条件が全く 
  異なるものです。
  「佐賀クリーク」の測定ポイント、潮汐などの測定条件とCOD、BODなどの測定データを
  見れば、その状況が判別出来ます。
  

      
8ページ 開門のために最低限必要な対策工事


14.図にある「排水ポンプの設置」「代替水源の確保」「既朽護岸整備」「既設樋門の改修」
  「鋼矢板の設置」などは当然しなければいけない。

  旧海岸堤防の損傷は、当時の高田知事が「閉め切りまで(ガマン)」と40年来延ばして
  来た。開門に際しては当然改修しなければいけない。
  

      
9ページ 新たな農業用水確保の検討について


15.下水処理水はT-N(全窒素)濃度が8.1mg/Lで農業用水基準値の8倍あり、不適として
   いる。
   この値は、窒素成分が多いと倒伏する、水田稲作に適用されるもので、畑作には
   該当しない。

   本明川、干拓地周辺の河川水、下水道処理水など単独では必要水量を確保できなくとも、
   合わせて使えばいい。
   「ため堀」は中海で実施されている。土地の確保に知恵を出せば可能。
  

      
10ページ 潮風害発生の恐れ


16.農水省の「開門パンフ」によると、「風向、風速、飛来塩分量を常時監視し、予防的、
   計画的に散水し塩分を洗い落とします。」

   同じく、「排水樋門の近くには十分な能力のある常時排水ポンプを新設し、排水します。

   県当局は意図的に「事前の対策工事や3-2開門」を無視し、「常時全開門での大きな
   被害」を喧伝している。

   3-2開門では調整池の水位は、現況と変わらない。

   塩害対策には干拓農地周辺を潮遊池で囲みます。十分な灌水により地下水位を保ちます。
  

      
11ページ 背後地の農業への影響も


17.農水省の「開門パンフ」によると、「開門は、調整池の水位を現状と同じ水位で管理する
   制限開門の方法(ケース3の2)で行います。

   この方法により、調整池が現在有する防災機能を今までどおり確保します。
  

      
12ページ 開門した場合の漁業への影響


18.「常時開門」を前提に影響を判断している。

   私たちは調整池の水位を、現状と同じ水位で管理する方法(ケース3-2)で行い、水
   位の変動幅を20cmに保って行うことを提案します。

19.「海をよみがえらせる」(佐藤正典)によれば、潮汐の力により砂と泥がふるい分けられ、
   泥干潟・砂干潟が形成される。
   「ACADEMIA」(162号) の「有明海・諌早湾の環境復元の意義」(佐藤正典)によれば、
   わずか27日間の開門調査でも、調整池内に汽水性の二枚貝や甲殻類の幼生が潮に乗って入り、
   定着した。

   海水導入で調整池の透明度が上がり、太陽光が湖底にまで届き、湖底の藻類の光合成が
   進み、栄養塩の消費と共にベントスの定着も盛んになり、二枚貝や稚魚が戻ります。これ 
   は赤潮の源を断つことを意味します。
   赤潮の発生の条件は「富栄養」と「成層化」です。調整池の水深は1.4mで、プランク
   トンはわずかな風でも撹拌され、大量発生には繋がらない。
   


      
13ページ 調整池や周辺の生態系への影響は

 
 20.「平成14年の開門調査では魚類だけで約2万尾の斃死と約1トンもの貝類の死骸が
    確認されました。」とありますが、この数字は誰が、何処で、どのような方法で確認
    したものでしょうか。

    長崎大学名誉教授の東先生らの調査によると、短期開門調査後、底生生物・二枚貝
    ともに生息密度は高くなっています。

 21.閉め切りによって従来の生態系が破壊されたのが事実である。

    今、調整池からのユスリカの発生、アオコによる悪臭とミクロシスティンの蓄積、
    CODなどの環境基準超過が常態化している。

    この調整池の汚水は毎週のように排水門から排出され、有明海の生態系を破壊し、魚
    や貝類がいなくなり、赤潮の発生によるノリ養殖への影響を及ぼしている。

 


      
14ページ みなさまへ 長崎県の考え方としては

 
22.「有明海の環境劣化の原因とされる様々な要因について、科学的に調査した上で、水産
   振興や環境保全に取組むことが共生につながる唯一の道と考えています。」
   との県の意思表示があります。
     

         
私たちも
     

   十分な防災対策と工事をした上で、科学的な開門調査をすることがヒトと自然の共生
   につながる道だと思います。
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     以上が質問状です。


  * 長崎県のパンフレットの概要は長崎県干拓課のサイトにあります。


     

      
  以下に長崎県干拓課長の回答書(pdfファイル 1~8ページ)を貼り付けます。




   



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   長崎県知事  中村法道 様

長崎県のパンフ「今を、未来を、なぜ崩そうとするのですか?」

についての公開質問状


                   2019年12月10日

            
 諌早湾の干潟を守る諌早地区共同センター

               代表   宮 地    昭

               連絡先  電話 0957-26-0135

先般、諫早市役所で、貴県が作成されたと思しき標題のパンフレットを頂きました。
また貴県のホームページに掲載の同様の各種情報も拝見しました。
その上で、別添のとおり質問と提言をしますので、公開を前提に文書で回答頂きますよう要請します。

 
回答の期限は、本質問状が到着後1カ月以内(2020年1月15日)までに要請します。






(参考 :下記にある「長崎県のパンフレット」は長崎県干拓課のホームページにその概要が掲載されています。)

長崎県知事に公開質問状を出しました。

20210507 更新