農水大臣が有明海、諫早湾を訪問。佐賀、長崎県知事と地元漁民、農民と懇談。 (13.02.03 更新)
   

昨年12月の総選挙での政権交代後始めて、自民党の林農水大臣が有明海と諫早湾を訪ね、今年12月の開門調査の期限を迎える現地の知事らと懇談した。

大臣は2月2日は佐賀県知事と開門訴訟の原告漁民、3日は長崎県知事と干拓地農民などと懇談し、諫早湾干拓地を視察した。

以下は佐賀市内のホテルであった漁民など原告団との懇談の様子。

諫早湾の漁民は生活が出来ません。
保険料も払えず、病院にも行けないのです。
漁協組合員全員一致で開門の決断をした。 長崎県の理解を求めて話し合いをする。
ノリの漁期を過ぎて、質の悪いものも採取して
佐賀のノリ日本一を確保した。
春の内に開門しなければ、調整池に今年も有毒アオコが発生する。 早期開門を求めて、国会でも働きかけを継続する。 会場の漁民、支援者のみなさん。
会場で高橋先生が大臣に要請した事項と有明海のアオコの現状を下記に示します。

林芳正農林水産大臣殿

 

諫早湾調整池でこれ以上有毒アオコを発生させないために早期の海水導入をご検討下さい

 

平成2522

熊本保健科学大学 教授 高橋 徹

 

諫早湾調整池では毎年アオコが大発生しています。

これまで数百億円の水質対策費用が投入されてきましたが効果はありません。

閉門したままでアオコを抑える事は理論的にも不可能です。

このアオコには強力な毒素[*]ミクロシスチンを産生するものがあり、これまで繰り返し大発生しています。

 

我々の計算では、2011年には約870kgのミクロシスチン類が海に排出されました。

それらは有明海の広範囲の海底の泥から検出されています(⇒)。

 

3月、アオコが発生せいてない時期の濃度が高いのは水温が低く分解が進んでいないためと考えられます。

 

さらに、これらは海底のゴカイや二枚貝などの底生生物にも蓄積しています。↓

これらを魚が食べると体内に濃縮され、ヒトが影響を受ける可能性があります。

 

しかし、ミクロシスチンは高い水温では分解が進行すると思われます。

幸い、2012年はミクロシスチン濃度が低めだったので、現在の海域底質の濃度は下がっている可能性があります(目下分析中)。

したがって、アオコを発生させないまま夏期を迎えると海域の汚染は収束に向かうでしょう。

 

しかし、12月開門なら、今年も再びアオコを発生させる事になります。今年も濃度が低いという保証はありません。

新たに作られた毒素が海底に拡散すると、その毒素は来年春まで残留する可能性があります。

 

危険性がわかった以上、これ以上のアオコ発生は止めるべきです。

アオコの発生を止めるには海水を導入するだけで済みます。

(原子力発電所よりはるかに簡単です)

 

農業用水が懸念されていますが、高濃度のミクロシスチンを含んだ水は農業に使えません。

干拓農地で灌漑を必要とする作物は一部であり、現在必要とされている水量は過大推定です。

そうでなくても、健康リスクと引き替えに議論されるべき問題ではありません。

万一、農業に被害が出た場合でも、補償する事は出来ますが、健康被害は補償すれば済む話ではありません。

 

長崎県は牡蠣を調べて検出されなかったという資料を作成し、県議会もこれに基づいて議論していますが、間違った検出限界を設定した資料で大変問題です。

 

以上の点をご検討の上、アオコ発生前の海水導入海水導入をご検討いただけるようお願い申し上げます。

 

より詳細は

本かホームページをご参照いただくか、直接お尋ね下さい。

http://magokorogai.com/index.php?

chatran@icloud.com



[*] ミクロシスチン-LRの急性毒性は青酸カリの数10-150倍。肝臓や腎臓を損傷する慢性毒性も知られています。

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