長崎県知事に、福岡高裁判決の確定に関する質問書を提出しました。 (2012.10.14 更新)

10月11日諫早湾の干潟を守る諫早地区共同センターは長崎県知事に下記の質問書を提出、2週間をメドに文書での回答と協議の場の設定を求めています。

今回の質問書は2010年12月の福岡高裁の「排水門開放」の判決が、国の上告しない決断で確定しているのにもかかわらず、県知事がこれを遵守せず、公然と「排水門開放反対」を主張し、県民を扇動していることへの抗議の意味を持つものです。


 

              2012(平成24)年 10月11日
  長崎県知事 

  中 村 法 道 様

諫早湾の干潟を守る諫早地区共同センター
                     (略称:諫干共同センター)

                     代 表    宮 地  昭

 

諫早湾干拓事業における福岡高裁の判決確定に係る質問書

 

 日頃、県政発展のために御尽力されていますことに敬意を表します。

 私たちは諫早湾干拓問題について、農業と漁業の共存、並びに防災や環境の保全を目指して取組んでいる諫早市・大村市の市民団体です。

 以下は諫早湾干拓事業に係る福岡高裁確定判決に対する私どもの見解です。この見解に対する貴 職のお考えを伺いたく、質問書を提出いたします。真摯に検討していただいて、2週間以内を目途 に文書で回答されることを希望します。なお、この見解は開門調査の是非を論じているものではな く、「確定判決」に対する貴職の考え方を質問しています。「開門阻止訴訟が係争中」などを理由 とした回答拒否はしないでください。これは知事への質問であり、知事以外の方からの回答は受け 取れません。

 

一、            福岡高裁判決は「確定」

「諫早湾干拓事業」に関して、201012月、福岡高等裁判所において「5年間の排水門を開放せよ」との判決が出され、その判決が「確定」しています。

裁判所の判決は法に照らして判断されたものです。最終的には日本国憲法に照らして判断されたものと言えます。判決が行政府や立法府からの命令ではなく、それらから独立(三権分立)した司法からの命令です。従って「確定判決」は総理大臣が替わろうが、政権政党が替わろうが覆されるものではなく、当然、「政治決断」で覆されるものでもありません。

もし、確定判決が実行されないなら、日本国は「法治国家」ではありません。日本社会を秩序付けている法体系を根本から否定するものであり、無法国家となります。

すなわち、何人たりとも確定判決には従う義務があると考えます。

質問1:この見解に貴職はいかがお考えでしょうか。

 

二、公人たる県知事の判決に従う義務

 確定判決では被告の国が水門開放の直接の義務を負っています。しかし、自治体の長である長崎県知事には判決を遵守する義務はあると考えます。県知事たる貴職は公人であります。公人たる貴職が「開門阻止」とか「開門を前提とした話し合いには応じない」という言動は、まさに「判決を無視する」「判決に反対する」態度としか言いようがなく、日本国憲法を無視し、法秩序を無視する行為と言わざるを得ません。公人たる県知事に日本国憲法を無視する行為が許されないことは当然です。

確定判決を正しく履行することは「開門調査に賛成とか反対とかのレベルを遙かに超えた、法を尊重するか無視するかの基本的な問題」であると考えます。ちなみに憲法第99条『天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員はこの憲法を尊重し、擁護する義務を負う』とあり、公人たる知事は確定判決を尊重し擁護する義務があると考えます。

質問2:この見解に貴職はいかがお考えでしょうか。

 

三、開門差し止め訴訟との関係

 長崎地裁で係争中の「開門差し止め仮処分請求」訴訟と確定判決との関係はどうなるのでしょう。

(1)「開門差し止め仮処分請求」が認められなかった(国が勝訴)場合

先の福岡高裁判決に従って判決が履行されます。

(2)「開門差し止め仮処分請求」が認められた(国が敗訴)場合

現状が維持されるでしょう。しかし、福岡高裁判決は2013年12月までには水門開放することが確定しており、この確定判決が効力を失うことは決してありません。すなわち、原告は「強制執行」の手続きを取ることになると考えます。

 「開門差し止め訴訟」や「長崎地裁控訴審の福岡高裁訴訟」が係争中を理由にして、「福岡高裁確定判決は履行しなくてもよい」との考えは成り立たないと考えます。

質問3:この見解に貴職はいかがお考えでしょうか。

 

四、公人たる長崎県知事の、果たすべき役目

公人たる貴職に遵法精神があるなら確定判決に従い長崎県政を開門調査実施へ向け、舵を切り替えるべきと考えます。具体的には

@    「防災対策」、「農業用水対策」、「開門の仕方」など県民の意見・要望等を取りまとめること

A    水門開放により有明海・諫早湾の自然環境や漁場環境がどのように変化していくのかを調査する計画や準備を進めること

B    水門開放が原因で、万一、農業や漁業、県民生活に被害が発生すれば、その全額を国が賠償することを国に確約させること

など、貴職が長崎県民の代表として国へ要望し、実現させることが確定判決履行の本筋であると考えます。貴職が「開門調査反対」とか「開門調査を前提とした話し合いには応じない」などの立場に固執する限り、農民・漁民・長崎県民の水門開放へ向けた意見・要望を取りまとめることはできません。     現に防災対策としての排水ポンプ建設にしても、開門を前提とした施策には反対せざるを得ない状況です。国が判決履行のために地元民の意見・要望を聞くことなしに水門開放を実行するようなことになれば、それこそ、県民への背信行為と言われても仕方ないのではありませんか。

質問4:この見解に貴職はいかがお考えでしょうか。

 

五、おわりに

福岡高裁判決が確定した以上、法秩序維持の方向へ長崎県政を転換されますように進言致します。

質問5:この見解に貴職はいかがお考えでしょうか。

 

以上が私どもの見解と質問です。この文書への問い合わせや回答は当会の事務局長・坂田輝行(〒854-0053諫早市小川町194-40、電話0957-22-6121)までお願いいたします。併せて、質問と回答についての意見交換の場を設定して頂きたく要請致します。


          

    
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