諫早湾をどのようにしたいのか。

        みんなで諫早湾の将来像を描いてみましょう


1.調整池に海水を入れ、干潟を再生する。

 北部排水門(200m)、南部排水門(50m)を常時開放する。
 開門により、閉鎖されていた調整池が最も劇的な改善効果を見せる。
 排水門を開放し、潮汐の動きと共に海水を移動させ調整池の水質改善を図る。
 調整池の干拓地の前面堤防の沖などの浅い部分には干潟が再生し、排水門の外から海水に混ざっているプラ  ンクトンなどと共に、稚魚や海藻、植物などと干潟の生物が生息する。

 ここは生き物にとっての産卵と発育の場であり、海水と淡水に棲むウナギ、カニなどが行き交う海と川の交 通の要衝ともなる。
 これらの生きものがいる干潟は、鳥にとっては格好のえさ場となる。

 干潟の生きものをねらうシギ、チドリをはじめ、淡水の水域にはカモなどの渡り鳥が集結する。
 干潟で生まれた魚介類、藻類などは海流に乗って湾外へ移動し、有明海、不知火海、さらに九州北西部沿岸 に流れて発育、繁殖する。
 干潟の生きものは海水や干潟の泥の中にある養分を摂取し、エサにします。この養分は川から流れ込んだチ ッソやリンなどの有機物です。この結果、川や海の汚れが消費され、きれいになり、調整池も諫早湾、有明 海にも昔の「宝の海」がよみがえるのです。

 この状態では潮受堤防が残っていますが、干拓事業が始まる前の状況に可能な限り戻したもので、より自然 の営みに近い形を整えることで、干潟を初めとした諫早湾の再生を図ることが出来ます。
 高潮、津波などによる災害が予想される時には、排水門は閉鎖する。
 
         現在の国内外の干潟と、生きものたちの様子。
 
 諫早湾の未来の姿は今、国内外の干潟に見ることが出来ます。
      有明海の干潟の役割

有明海・鹿島市新籠の
クロツラヘラサギ 

有明海・鹿島市七浦のムツゴロウ 島根県・中海(水鳥公園)のカモ

香港・マイポの紹介(日本語


マイポの紹介(youtube)
(英語)


WWF-Hongkong(英語)

香港・マイポは中国随一の経済特区・シンセンに隣接する。
マイポにはシギ、チドリ、クロツラヘラサギなどの渡り鳥が来る


2.新干拓地と旧干拓地の塩害対策



 調整池に海水が入れば、当然隣接する畑、水田への影響が心配になる。
 その対策として、堤防のかさ上げや補強、堤防の内側に水路を切って潮遊池を巡らせる。防風・防潮林の植 栽、又はネットを張る。
 堤防に近い畑には飼料作物など、潮に強い作物を作る。
 スプリンクラーを配置し、潮を被った時に除染する。このスプリンクラーは、灌漑用の散水にも使う。
 
    島根県の中海は、干拓をやめて排水門を撤去した。


中海の  防風柵と防潮林
            
    スプリンクラー


3.干拓地の農業用水


 干拓地への農業用水の水源となる揚水ポンプは、本明川が流れ込んだスグ近くの調整池にある。
 調整池に海水が入るとここの水も塩分濃度がかなり高くなり、野菜には使えない。
 代替水源として、

(1)本明川からの水
(2)倉屋敷川からの水(小野用水)
(3)諫早市浄化センターからの下水処理の水
   排水量は6,000t/日、水質は窒素が8mg/lと高い。現在も本明川に流してブレンドして干拓地の畑に使   っている。
   これらの水を一時保管しておくために「ため池」を確保する。場所はそれぞれの川の近くと干拓地内部   の遊休地をあてる。

   
      本明川
   
   中海のため池


4.旧干拓地の防災


 森山干拓地を始め旧干拓地の堤防は、新干拓地と調整池に守られているという理由で完成以来その補 修と改善が長年放置されて来た。さらにこれらの地域(いわゆる後背地)は海抜が低いので、雨量に よっては田畑や道路、住宅地の冠水が干拓工事が完成した現在も毎年繰り返されている。

 調整池の有無に関係無く、この心配をを解決するには、旧堤防の改善と排水路や排水ポンプの設置整 備が必要である。
 下記のサイトにポンプの必要性が、森山の湛水の事例から説明してあります。

 2011年8月23日深夜からの森山大豆畑湛水被害に見る「諫干防災」の問題性(菅波 完)



    
   
    二反田川河口・釜の鼻の排水ポンプ(工事中の写真)
釜の鼻排水樋門
(今は取りり壊されている


5.調整池と諫早湾、さらに有明海、八代海での漁業



 排水門開門当初には、調整池からの富栄養化した淡水や排水門周囲と調整池内部での底泥の巻き上げ の影響を受ける。
 湾内のアサリ養殖、カキの養殖イカダは海況が落ち着くまで暫く避難せざるを得ない。
 しかし、その後調整池の水質改善と干潟の再生が進み、この海域は従来生産されていたアサリ、アゲ マキ 、カキ、タイラギ、シャッパ、ハイガイ、ムツゴロウ、などの好漁場になる。

 調整池の水質改善と干潟の再生、さらに潮汐の回復による海水の撹拌効果は有明海、不知火海の海況 改善にも良い効果をもたらす。
 赤潮やアオコ、貧酸素といった、マイナスダメージが無くなり、漁獲量の飛躍、ノリなどの養殖業の 安定などが期待できる。


         

開門している韓国・セマングムでは今もアサリが獲れている。

かつて諫早湾で獲れていたタイラギが復活する。
(韓国・釜山の魚市場)




6.地域の漁業と観光などへの波及効果



 魚介類の生産は地元漁業者に多くの生産をもたらし、地域での経済効果は莫大なものとなります。
 さらに干潟での潮干狩り、ガタ遊びには地元の子供たちが集い、全国各地からの修学旅行などで他で は体験できないドロンコが人気を呼びます。

 海の生きものをねらっているのは人間だけではありません。
 かつて、諫早湾をエサ場にしていた渡り鳥が集結します。
 シギ、チドリ、クロツラヘラサギなどの野鳥は遠くオーストラリア、ニュージーランドから有明海を 経由して、シベリアにまでの旅を毎年しています。
 彼らにとっての諫早湾はまさにエサの補給であり、休息の場でもあります。
 数十万羽にも及ぶ彼らの群舞は、広大な干潟があってこそ見ることができます。

 今から「エコツアー」という言葉が諫早湾にはピッタリのものになります。
 全国、あるいは世界中からの自称ナチュラリストが望遠鏡を片手に、諫早の街を訪ねます。

 諫早湾に流れ込む河川で最大の本明川が諫早市中心部を流れています。
 古来からウナギやカニが川を上り、近くの人達の食卓にも見られていました。
 市内にはウナギ専門の料理店が数軒、今もかば焼きの匂いを漂わせています。
 ウナギの稚魚が川を上り、釣り人が竿を出す光景も見られるでしょう。



     
 有明海・鹿島のガタリンピック  



   
       
        年間300万人の観光客が来る韓国・順天湾





   

  アフリカクロトキ(台湾語)
    台湾・高美(カオメイ)の湿地



7.地元諫早、長崎への恩恵

 地元諫早湾で魚、貝が獲れる。鳥が舞って人が集まる。
 これが実現した時には、自ずから地域の再生が始まります。

 自然の力は偉大です。
 諫早湾にかつていた、沢山の魚、貝、カニ、エビなどが戻ってきます。
 ウナギやカニなど、海と川を行き来する生き物も戻ってきます。
 籠を仕掛ければ、ウナギやカニが獲れます。
 地元のウナギの専門店では、本明川で獲れたウナギのかば焼きが提供されるでしょう。
 アメリカではダムを撤去して、2年でウナギが戻ったとの報告(英文)がなされています。
 熊本県荒瀬ダムの撤去がはじまりました。
 川辺川河口にアマモが増え、川を登るウナギが取れるようになった。
 
 小長井のカキ焼きの小屋に、諫早湾のカキが復活します。

 人間が二千数百億円かけて作った工作物を、門を開けて海水を通してやるだけで、回復させてしまい ます。
 今、有明海再生、漁場環境改善、調整池の水質改善などの名目で、毎年数億円のお金が有明海と諫早 湾に つぎ込まれています。

 干拓工事など、公共工事に使った借金が国と地方にあり、子孫の代まで返済しなくてはいけません。
 せめて今からでも、お金を使う必要の無い諫早湾にしたい。
 さらに、お金を稼げる諫早湾が出来上がります。

 子供たちに何を残すか。
 負の遺産ではありません。実り豊かな自然遺産を残しましょう



8.事例に学ぶ

 豊かな自然を持っている地域には、それぞれみんなで楽しむ仕組みがあります。例えば
 有明海の鹿島の干潟では「干潟体験」があり、毎年6月に「ガタリンピック」が開催されています。
 中海には水鳥公園があり訪れる水鳥たちとの楽しい交流があります。
 韓国の順天(スンチョン)湾 はラムサール条約に登録され、木道が敷かれ、干潟を巡る観光船が行き 交い、年間300万人の人々が訪れています。NBC長崎テレビの報道センター(20120927を参照   )でも。
 同じく韓国の務安(ムアン)は干潟資料館や干潟体験さらに地元の方々の郷土芸能などのしくみが整 備されています。
 香港のマイポでは政府が保護区を設定し、資料館や野鳥観察の施設を作り、運営をWWF香港が担当 しています。
 台湾の台中にある高美(カオメイ)湿地公園..。台湾はラムサール条約には加入していませんが、この 海岸は十分その価値があります。
 いずれの地域でも共通しているのは、地方政府がしっかりした「干潟を守る。」という信念を持って いることです。
 自治体が施設や運営の基盤整備に財源を確保し、地域の人たちが知恵と労力を提供するという理想的 な協力関係を作り上げています。


[参考]
 諫早湾でまず手を付けることは、地域の人達の「話し合う場を持つ。」ことです。
 それぞれが自分たちの考えを出し合い、子供たちに残すものを確かめ合う作業を進めましょう。

 愛知県のプロジェクトチームによる長良川河口堰検証の経過
 「河口堰の見直し」をマニフェストにした県知事を選んだ県民が、総参加で未来を開く。
 韓国・始華(シーファー)湖の閉め切り堤防開門(NBC報道センターの20120908を参照)の経過。
 
地元住民の声を取り入れて海水を導入し、潮力発電に取り組む

 島根県中海土地改良事業による中海の淡水化の中止
 
特産のシジミの壊滅に危機感を持った漁民、住民が国と県を動かす。



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こんな諫早湾にしよう。

13.09.04 更新